阪神・淡路大震災直後、未曾有の災害によって神戸は10年前の水準まで落ち込んだという見方が広く流布した。そしてこの遅れを取り戻すために道路・港湾の復旧や全半壊の解体戸数に見合う住宅建設が復興計画の重点施策とされた。
しかし、この見方は盾の一面を見落としている。この大震災によって、神戸は突然10年後の世界に投げ出され、否応なしに高齢化、空洞化、膨大な福祉負担などの課題に直面することになった。今、われわれが取り組んでいる問題は、まさに近い将来わが国の社会が解決を迫られる問題を先取りするものである。こうした観点から、神戸復興塾は被災地で生まれた21世紀の社会を切り開く鍵になるかもしれない新しい動きに注目し、その活動を担う人びとへ惜しみない声援を送るものである。
《復興塾が生まれるまで》
今回の震災では被災者の救援や被災地のまちづくりに多くのボランティアが初めての経験に戸惑いつつ、本業を離れて、しかもその専門性を生かしつつ活動した。その中で大学の研究者、医師、建築家、ジャーナリストなどが自発的に結集し、復興のあり方や具体的な支援策を語り合ったのが復興塾の母体である。このようにして生まれた団体は被災地のあちこちで活動しているが、特定の地域や既存の研究組織にとらわれないわれわれの活動は構成メンバーの多彩さと自由闊達な発想が特色であると自負している。 |